大切なお子さまの歯の心配事はむし歯だけではありません。歯並びや噛み合わせは、歯の健康に非常に深く関係します。特に「受け口」と呼ばれている下顎前突は、そのまま放置しておくと色々な弊害が起こり、お口の中だけの問題では済まなくなてくる場合があります。

「受け口」はどんな悪影響がある?

奥歯で噛んだ時、通常は上の前歯が下の前歯を数ミリ覆っています。ところが下の前歯が上の前歯より出ている場合、下顎前突という不正咬合と診断されます。この下顎前突は「受け口」「しゃくれ」「反対咬合」などと呼ばれ、横から見た場合、顎が前方へ突出している特徴があります。受け口による悪影響は、次のようなことが挙げられます。

・前歯が噛み合わず奥歯でばかり噛むため、奥歯の寿命に影響する

・前歯での咀嚼がないため上あごの成長が抑制される

・顎に負担がかかりやすく、顎に痛みを感じやすくなる

・顎関節症を引き起こしやすくなる

・噛み合わせが悪いため、頭痛や肩凝りが起こりやすい

・発音しにくく、相手が聞き取りにくい。特に「サ行」が抜けたように聞こえてしまう

・見た目のコンプレックスを感じやすく、特に思春期のお子さまは精神的な影響を受けやすい

 

このように、受け口は出っ歯や歯並びの乱れなどと比べると、顎や体への影響など見た目だけでは済まない問題が生じやすくなるのです。また顎の骨は小さいうちはまだ柔らかく、適切な治療を行うことで顎の骨の成長を促すことができますが、成人すると顎の骨の成長は止まり、治療が大掛かりになってしまうことがあります。お子様が受け口かも?と思ったら、まずは早急に歯科医院へご相談ください。

 

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受け口の原因とその治療法について

受け口の原因は、歯の形態や指しゃぶりなどの癖などが原因と考えられる「歯性下顎前突」と、遺伝などによる顎の骨の骨格が原因である「骨格性下顎前突」があります。歯性下顎前突は歯の発育に問題がある、指しゃぶりなどが考えられます。これに対し骨格性下顎前突は、顎の骨の位置に原因があり、遺伝が大きく関わっています。

受け口の原因が歯性下顎前突の場合、早期に治療を開始することで改善が可能です。お子さまの場合、第一期治療と第二期治療に分けて治療を行いますが、受け口の治療はその前段階から治療を開始する必要があります。第一期治療に繋げるための前段階の治療では、パナシールドやプレオルソなど受け口を改善するための顎の骨の成長や正しい舌の位置へ誘導するための取り外し式の軟らかい装置を装着し、慎重に経過を観察します。

一定期間装着後、噛み合わせが正常になっても前歯が永久歯に生え変わると再び噛み合わせが上下逆になり、反対咬合になった場合、第一期治療である床矯正SH療法を行うことで反対咬合は改善されるケースがほとんどです。

ただし骨格が原因である骨格性下顎前突(遺伝性が大きい)の場合、高校生以降での下顎骨の外科処置を検討する必要性があります。

 

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受け口は早期の治療開始が大切!

受け口の治療は、いかに早く治療を開始するかによって治療期間や仕上がりの程度が大きく変わります。早期に受診し、前段階の治療を開始することで、その後の治療期間が短く済むことがあるため、「受け口かも」と思ったときや、集団検診などで指摘があった場合は、早急に歯科医院で相談して下さい。