お子さまの歯並びやかみ合わせを整えるために行う小児矯正では、乳歯が自然に抜けるのを待つことが多いのですが、治療の進行や永久歯の萌出状況によっては、歯科医師の判断で乳歯を抜歯することがあります。「せっかく自然に抜ける歯をわざわざ抜くの?」と不安に感じられる保護者の方もいらっしゃいますが、実は矯正治療をスムーズに進め、より良い結果につなげるために大切な処置となることがあります。今回は、その必要性と理由について詳しくご紹介します。
矯正装置と乳歯の関係
小児矯正では、床矯正装置やワイヤー、マウスピース型装置など、さまざまな矯正装置を使用して歯や顎の位置を整えていきます。ところが、矯正治療を行っている最中に乳歯がグラグラになり、後から生えてくる永久歯が顔を出し始めると、装置がきちんと装着できなくなる場合があります。装置が浮いてしまったり、適切に力を加えられなかったりすることで、治療効果が下がってしまうのです。
そのようなときには、自然に抜けるのを待つのではなく、必要に応じて乳歯を抜歯することで、装置を再び正しく使えるように調整することがあります。
永久歯の萌出をスムーズにするため
乳歯がなかなか抜けずに残っていると、その下から出てきている永久歯が正しい位置に生えることができず、斜めにずれてしまったり、隣の歯を押して歯並びが乱れてしまったりすることがあります。このような場合、歯科医師が計画的に乳歯を抜歯し、永久歯の萌出をスムーズにすることで、将来的な歯並びのトラブルを防ぐことができます。
特に犬歯や前歯などスペースが限られる部分では、乳歯を残したままにしておくと、永久歯が正しい位置に並ぶ余地を失ってしまうこともあるため、抜歯の判断が重要になります。
また親御さんは「自然に抜けるものを抜いてしまって大丈夫なの?」という疑問を持たれる方も多いのですが、歯科医院での抜歯は安全に行うことができますし、治療計画に沿った正しいタイミングで抜くことで、お子さまの歯並びにとってプラスになることがほとんどです。
また、乳歯を抜くと永久歯がすぐに生えてくるのでは?と心配される方もいらっしゃいますが、実際には永久歯が準備できていなければ時間をかけてゆっくり生えてきます。その間は矯正装置や保定装置を用いながら、周囲の歯が倒れ込んだりスペースがなくなったりしないように管理を行います。
抜歯が必要かどうかは個別に判断
乳歯の抜歯が必要かどうかは、お子さまの年齢、顎の成長状態、永久歯の萌出状況、治療計画の内容によって異なります。そのため、「小児矯正では必ず乳歯を抜く」というものではなく、あくまで一人ひとりの状況に応じて判断されます。
小児矯正における乳歯の抜歯は、無理に行うものではなく、矯正装置を正しく使うため、永久歯がスムーズに生えるため、そして治療計画を滞りなく進めるために行われるものです。
気になることや不安がある場合は、必ず歯科医師に相談し、お子さまにとって最善のゴールを目指してあげましょう。