乳歯は、永久歯が生えてくることで自然に抜け落ちますが、乳歯の状態によっては、その後の歯並びに影響を及ぼしてしまうことがあります。特に乳歯のむし歯をそのままにしておくことは、望ましいことではありません。ではむし歯で乳歯が早く抜けてしまうと、歯並びにどのような影響が出てしまうのでしょうか。前回は矯正治療中のむし歯についてお話しましたが、今回は、矯正を始める前のむし歯についてお話いたします。
乳歯の役割とは?
乳歯は永久歯が生えるまでの短い期間ですが、永久歯が生えるまでの間に大切な役目を担います。どうせ抜け落ちてしまうから、と軽く考えてしまうかもしれませんが、乳歯には以下のような大切な役割を持っています。
・食べ物を噛む役割
・永久歯の生え方を誘導する役割
・顎の骨の成長を促す役割
このように、短い期間ではありますが乳歯にはとても大切な役割があるのです。乳歯を大切にすることは、将来の歯の健康に大きく関わるということをまずしっかりと理解しておきましょう。
乳歯がむし歯になると、歯並びにどんな影響が出る?
乳歯は、永久歯が生えることで自然と抜け落ちます。ところが永久歯がまだまだ抜ける時期でないのに、乳歯がひどいむし歯になってしまうと、永久歯の萌出を待たずに乳歯を失ってしまう可能性があります。
軽いむし歯なら虫歯治療や予防処置で乳歯を持たせることはできますが、すっかり歯が溶けて真っ黒になった歯、根っこだけになった歯は早期に乳歯を抜かなければいけないこともあります。
永久歯を正しい位置に誘導する役割がある乳歯をむし歯などで早期に失うと、永久歯が正しい位置に生えてこない可能性が高くなります。
また失ってしまったスペースを埋めようとして、両隣の歯が傾斜してしまうこともあります。そうなると永久歯が生えるスペースがなくなってしまうため、必然的に正しい歯列からはみ出してしまいます。それが叢生や八重歯などといった歯並びの悪さとなって表れてしまうことがあるのです。
なお乳歯をむし歯で失ってしまうと、後から生える永久歯もむし歯になる可能性が高まります。
小児矯正だけに頼らず、乳歯や永久歯の健康を維持することも大切
もし永久歯列が乱れても、矯正治療をするからそれほど心配していない、と考える親御さんもいらっしゃるかもしれません。確かに永久歯の生え方や噛み合わせが悪ければ、小児矯正で改善は可能です。
しかし、乳歯や後から生えてくる永久歯が健康であるからこそ、歯列矯正が生きてきます。乳歯だからと安易に考えず、のちの永久歯の健康や歯並びのためにも、むし歯にならない生活習慣や仕上げ磨きなどをしっかりと行ってあげましょう。